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2003年度ドクター・リチャード・チャールズ,ドクター・エッシャー・ユーウィック・リー基金による助成プロジェクトについて

世界中の視覚障害児のかくれた能力を開花させるということや視覚障害児の教育的ニーズをつかむことについて教師の能力を積み上げるという壮大な抱負をかかげ,ドクター・リチャード・チャールズ,ドクター・エッシャー・ユーウィック・リー基金による助成プロジェクトの枠組みが,2002年7〜8月にオランダで開催されたICEVI世界大会で示されました。プロジェクト元年の今年はICEVIにとってもプロジェクト推進について善処すべきことがあり,幹部役員(Principal Officers)は,(当プロジェクトで)期待される目的を達成できるかどうかという点について,ICEVIの採用したアプローチの有効性を継続して審査・評価しています。

広大なアフリカ地域では,当プロジェクトを視覚障害児の教育的ニーズについての認識を高めるために活かしています。視覚障害児に算数を教えることに関して,アフリカ全土から集まった教師の意識を高めるため,2003年には3回のワークショップが開かれました。プレトリア(南アフリカ共和国の首都)でのワークショップに参加した教師たちは,視覚障害児に算数を教えることについての不安は消え,今では自信をもって教えられる,といっています。また,プロジェクト初年度の特記事項として,視覚障害児に携わる組織間での協調・協力があげられます。このプロジェクトを推進するために,それぞれの組織がお互いの持つサービスを提供しあい,ICEVI,CBM,Sight Saversがこれまでよりも一層緊密な関係を持つことになりました。アフリカ地区は視覚障害者へのサービス提供の拡充において,この基金の援助を受け,長期的な展望のさなかにあります。将来の発展にむけて,教員養成,弱視児の教育,点字の読み書き,算数の教授を優先分野としています。端的にいって,アフリカ地域のプロジェクト初年度は,ICEVIの大切な戦略目的でもある,組織間の円滑な協調・協力とネットワーク作りが推進された年でした。

東アジア地域では,保護者対象のプログラムから視覚障害者教育に目を向けるよう大学の学部長(Deans of Colleges)レベルに働きかけるプログラムまで,幅広く様々な活動が運営されています。とくに,視覚障害児の就学機会をふやすためのキーファクターとして,保護者の参加(関与)に焦点をおいています。リー財団の助成により,2003年にはフィリピン,インドネシア,中国でプロジェクトがすすめられ,その他の国々でも2004年に開始されます。バギオ(フィリピン・マニラ北西にある地方都市)で2003年8月に行われた大学の学部長を集めた会議では,約40名の学部長が集まり,そこでは視覚障害者の高等教育推進のためのインクルーシブ・カリキュラムを作成する必要性が強く訴えられた。東アジア地域において,リー財団の助成は,ICEVI戦略計画の目的のひとつであるあらゆるレベルの視覚障害児の能力について意識を向けさせることに使われました。

ラテンアメリカ地域は,教育サービスの拡大において,ICEVIの小地域(sub-regional)を活性化させる方法がいかに効果的であるかを証明した典型的な例です。リー財団の助成は4分野―幼児と早期指導,弱視児の教育,視覚障害以外にも障害を持つ子ども(重複障害児)の教育,歩行訓練―において教員の資質向上のために重点的に使われました。(プログラムを進めるのに)小地域に分割することは,ICEVIのメッセージをラテンアメリカ中に草の根レベルにわたって染み込ませるのに役立っています。注目すべきことは,ラテンアメリカ地域では,解決すべき課題に向き合うのにこの上なく現実的で効果的である小地域レベルでの会議に,(通常上位の)地域代表者会議(Regional Committee meetings)の概念を移譲したことです。リー財団助成プログラムの応募者への案内はスペイン語とポルトガル語に翻訳され,ラテンアメリカ地域全域にわたってこのプログラムが伝えられることに役立っています。繰り返し述べますが,この地域では,教師や専門家の能力を高めることに関して,CBMやONCEなどの国際組織がいかに効果的にICEVIの努力をサポートできるかということが示されているのです。ラテンアメリカ地域では,2004年のリー財団で助成される活動についての青写真をすでにもっており,ICEVIの強さは地域構築(小地域の分割と活性化)とそこでの活動にあるという本部の信条が正しいことを証明しています。

西アジア地域は,設備や備品など物質的な拡充をさらにすすめるために,リー財団の助成にその源を頼っています。視覚障害児の保護者向けで「障害との付き合い方(disability management)」に関するハンドブックを作成するため,インドリハビリテーション協会と共同作業中です。インドでのリー財団助成プロジェクトである電子テキスト作成は,視覚障害を持つ学習者に便宜を図るため,何百もの書籍を電子テキストのフォーマットに変換することを目的にした共同事業です。ネパールでの助成プロジェクトは,大きくなりつづけるITとコミュニケーションテクノロジーの世界にあって,視覚障害児をコンピュータ使用になじませることです。最も数多くの視覚障害者を持つこの地域は,その莫大な数の人たちに汎用できる対応策を国際組織や各国政府機関にICEVIと共同して行うよう促しています。

おわかりのように,リー財団助成プロジェクトがまだその進行途上にある上記4地域ですが,それぞれ独自のアプローチを採っています。2003年に承認された99のプロジェクトのうち,この4地域は79のプロジェクトを完了させ,残りのプロジェクトも2004年にむけてうごいていくことでしょう。当プログラムの初年度(2003年)であったため,活動の準備や実践の過程を理解するのに時間がかかり,その結果,採択されたプロジェクトを2003年末までに実行できるほどその状況が十分に整えられていないところではプロジェクトの遂行が2004年まで延びてしまうことがあったのは避けようのないことでした。2003年,当プログラムでその利益がもたらされた人の数は,55634名の視覚障害児と3855名の教師・保護者・その他の関係者であり,非常に満足のいくスタートであったと思われます。

初年度の経験から,各地域ではそれぞれの地域代表者(a regional chair person)と協議の上,マクロな計画を考えるべきであることを幹部役員は決定しました。本部事務局長はそれぞれの地域代表者と絶えず連絡をとっており,当プログラム2年目は初年度よりさらに効果的でその意図に合致したものになるはずです。

(訳:天野和彦)

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