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インド・リハビリテーション協議会

障害者サービス増進のため人的資源開発の先駆的目標

はじめに

インドは、328万平方キロメートルの国土に、人口10億人がいる大きな国である。28の州と7管轄地の連邦国で、32の言語の他に数えきれない地方語がある。数多くの都市、町、農村があり、これらが地域性や文化の独自性に広範な影響を与えている。この巨大な国で何か事業を成し遂げるには、常に立ち向かわなければならない大きな課題がある。最近、インド政府は、障害者(PWDs)が市民として一般社会に統合化されるため、そのニーズや権利また課題に関して、特別な関心を示している。特に、重要課題は、多数の障害者人口のそれぞれのニーズにあった仕事をする豊富な人材を開発し育成することである。

インド政府は、1947年という早期から障害者の教育とリハビリテーションに、特に注意を払ってきた。しかし、進展は遅く全障害部門が、国連の国際障害者年が宣言された1981年にやっと後押しされるという結果になった。インドでは、リハビリテーションや特殊教育分野での人的資源開発は、20世紀初期にすでに存在していたが、その養成プログラムに統一基準がなかった。その結果、各種施設で行われるリハビリテーションや特殊教育の方針などは、広範にわたり相違点があった。これら分野に統一基準を導入する最低限の標準化や質の高さを定めるために、政府は広く専門家の意見を聞き、各レベルにおいて標準のコースを作るため、1986年に一つの「機関」を立ち上げるべきとの決定がなされた。そこで認可登録された団体として、「リハビリテーション協議会」が出来上がった。

しかしながら、他の同じような団体に関して基準となるルール作りを実施しようとしても、十分な権威者が社会にいないことがわかった。その結果、リハビリテーション協議会はインド・リハビリテーション法(1992年)により、それは1993年6月に施行されたが、「国家機関」としての身分が与えられた。新機関はインド・リハビリテーション協議会(RCI)と呼ばれた。議会法により再設置されることにより、RCIは全国的にリハビリテーションと特殊教育分野における標準化と、あらゆる養成についての政策とプログラムラム作りを実施する権威が与えられた。1992年のRCI法は、2000年に修正され、同協議会はリハビリテーションや特殊教育分野の研究促進と、1995年の「障害者年」(機会均等、権利保護、完全社会参加)に調和するよう、各障害における定義の維持統一など重要な仕事を担うことになった。

RCIの目的

現在の主な目的;

  1. 養成の方針とプログラム作成
  2. 養成コース(カリキュラム)の標準化
  3. 調査研究の促進
  4. リハビリテーション、特殊教育分野で働く専門家や職員の登録管理のための中央リハビリテーション認定所(CRR)の維持運営
  5. 継続的リハビリテーション教育の推進

人的資源開発のための専門家分類

RCI法により、同協議会は障害者への質の高いサービスを提供するため、専門家、職員を16種に分類し、養成プログラムを開発、標準化、規定化する責任がある。そのために認可された部門は以下のとおりである;

  1. 聴覚学者とスピーチ・セラピスト
  2. 臨床心理学者
  3. 聴覚補助具と金型制作技術者
  4. リハビリテーション技術者
  5. 障害者の教育・訓練の特殊教育教師
  6. 障害者に対応する職業カウンセラー、就業訓練職員、職業斡旋職員
  7. 多目的リハビリテーション・セラピストと技術者
  8. 医療聴覚士
  9. リハビリテーション心理学者
  10. リハビリテーション・ソーシャルワーカー
  11. 知的障害者向けリハビリテーション技術者
  12. 歩行訓練士
  13. コミュニティ・ベースド・リハビリテーション(CBR)専門家
  14. リハビリテーション関係カウンセラーおよび管理運営者
  15. 義歯、歯科矯正士
  16. リハビリテーション・ワークショップの責任者

特殊教育に関してRCIが認可する施設とコース

RCIは、はっきりとした役割が決められている。人的資源開発を基本母体として、独自のコースを設けることができる。しかしRCIは、それぞれの地域で違うレベルのコースを提供して、適切な社会基盤ができるよう、数多くの施設や団体を承認している。それらにはボランティア団体から大学、医科大学まで含まれる。

過去10年間に、RCIは20の養成施設から、181の認可施設を持つまでに成長した。そこでは短期再研修コースを含み、41の通常養成プログラム業務を行った。ごく最近、RCIは自閉症スペクトラム(ASD)分野のコースを開設し、また盲聾唖者用養成コースも設けた。

新プログラムは、継続的にこの分野の人材要請に応えられるよう開発されている。いわゆるRCIは人的開発に備え、80種のカリキュラムを用意している。たとえば、人的資源開発省は地域小学教育プログラム(DPEP)で教師を養成するために、短期コース開設についてRCIに要請してきた。RCIは障害児統合教育(IED)でDPEPプログラムの下で働く特殊教育教師のために、45日間の基礎コースを設けた。このコースは普通校に障害児を含める初期的な試みであり、また特殊事情に見合った整備事業としてRCIの努力の賜物である。

RCIはまた自閉症、脳性麻痺、知的障害、多重障害児たちの介護者を養成する「ナショナル・トラスト」(国内委員会)のために、短期カリキュラムを設けた。このコースはこれらの障害児を世話する親たち、兄弟姉妹、親戚などに有益なものとなるだろう。

特殊教育における人的開発の刷新的方法

インドにおいて、リハビリテーションと特殊教育分野で資格を持つ専門家や職員の年間養成数は、4500人から6000人である。1993年の年間わずか450人に比べたら、この数は大変勇気を与えられるものである。しかし、わが国で必要とされる養成を修了した人的資源の巨大需要にはまだ満たない数である。

RCIは通常の養成システムを通して豊富な人材を育成することは、法外な時間を要するということに気づいている。それで障害者サービス提供の人材供給を迅速化するために、わが国の放送大学を用いて遠距離者用プログラムに着手した。RCIはMadhya Pradesh Bhoj Open University(MOBOU)と共同して、国内にある67ヶ所の学習センターで特殊教育プログラムの教育学における学士号を取得できるようにしている。在職中の教師のために、173ヶ所の施設で基礎コースを実施した。これは特殊教育校が非常に限られているので、地域にいる障害児のニーズを取り扱う普通校の教師を支援するものである。

RCIとMPBOUとの共同プログラムで、2800人以上が養成カリキュラムを終了している。また特殊ニーズをもつ障害児・者のために働く教師の訓練に対する要望を満たすために、この遠距離方法で更に毎年2500人以上が養成をうける計画である。

RCIとIndia Gandhi National Open University (IGNOU)が共同で努力した結果、最近25ヶ所の障害者分野に際立つ養成施設が、テレビ受像学習センターとして認可された。このセンターは遠距離教育プログラムを導入するため、衛星基地を通し直接受信システムで結ばれている。

最近のRCIのもう一つの開発は、科目履修認定モデュラー方式を導入したことである。多くの人たちはより高等教育の履修を望んでいる。フルタイムで働きながら、最新の知識を得たいと望んでいるが、フルタイムの学生になるには時間や資源が難しい人に、科目履修認定モデュラーコースは選択肢として大変力を与えられる。このモデュラー認定方式は、開発途上国やインド、IGNOU やその他の有名な学校では成功したやり方として、しばらくの間一般的に行われてきた。RCIはまた現在、人的資源開発の歩調を速めるため、この方式によるコースを提供し始めた。

当協議会は、カルナカタ州のBanglore 大学と共同して、遠距離方式でCBRの認定コースに近々乗り出す予定である。そして、IGNOUの援助を得て「問題感知のための親たちのプログラム」を計画している。

継続的リハビリテーション教育

教育とは継続的課程であり、効果を継続するものである。リハビリテーション専門家は自分の分野の知識や課程を最新のもので実行する必要がある。これを考えて、RCIは登録された専門家たちが、新しい知識や技術を持てるよう努力している。そのため当協議会が、短期、再研修コース、オリエンテーション・プログラム、講演会、ワークショップなどを提供している。専門家に有益なものとなるプログラムが提供できるよう、公的・私的双方の機関、研修所、大学、施設などに資金やカリキュラムを提供して支援している。

範囲拡張のための特別プログラム

当協議会は1998年10月に、特殊教育教師、リハビリテーション従事者に機会を与えるため「全国ブリッジ・コース・プログラム」に着手した。彼らは1983年6月以前、すなわちRCI法が始動するまで、どのような認可された公式の質の高い訓練養成を受講しないまま、障害者分野で働いてきた人たちである。ブリッジ・コース・プログラムの主たる目的は、RCIの資格認定をとっていないすべての現従事者に、RCIの中央リハビリテーション登録所に登録するため、一度だけの機会を提供するものであった。このコースは、リハビリテーション職員として存在する規則に則り、RCIの資格を与えるものであった。この大規模なプログラムは、インド国内の150以上の団体によって運営され、2002年3月に成功裏に修了し、12000人以上が養成された。

1999年7月当協議会は、辺鄙な地域にいる障害者のために、質の高いサービス提供の増進を目的として、「障害者基本健康センター(PHCs)で働く医療従事者のための全国オリエンテーション・プログラム」の実行に乗り出した。このプログラムは数々の障害者問題、たとえば、数多くの公的・私的機関を通して予防の考え方、初期発見と介入、リハビリテーションなどの意識を喚起するための道を探るものであった。PHCsは、国内のあらゆる部分に機能するインド健康管理システムの只一の組織である。各PHCは、現場でのサービス提供機関として、最小限の必要基盤設備である。これは初めてであり、また基本的サービスの欠如により悪い影響を受ける辺鄙な地域の人々にとっての最終的に利用する接触点でもある。RCIは、鍵となる障害者問題のいくつかを、RCIの医療従事者に認識させることによって、この辺鄙な地域の障害者や家族に数々のサービスを与えられると考えてきた。このプログラムにより、当協議会は71ヶ所の専門機関の援助により、インド国内の28地方に手を伸ばすことができた。このようなことから、600人以上の育成専門家たちが養成され、彼らが次に約15000人のPHC医療従事者を養成した。

多数の施設が確実に活動に参加するために、RCIは核機関として設立されたNGOも巻き込み、国内の5区域にゾーン委員会を設立した。立法関係者、行政立案者、運営管理者、メディアなどを通し、社会の見方を変えるため多面的な取り組みで喚起している。

知識を普及させるための広報活動の必要性

RCIは特殊教育分野に関する広報促進のため多量の資料を作成した。主なものは以下のとおりである。

視覚障害者部門のRCIの役割

RCIは、すべての障害部門に人的開発に関わる先駆的団体である。特別に力を入れている部門はないが、今世紀は視覚障害分野を人的開発において特別の対象部門としている。RCIは最近、特に視覚障害分野の情報技術に多くの援助をおこなっている。情報技術は視覚障害者に平等の機会を与え、リハビリテーションや教育において多面的前進に結びつく。今日のハイテクは、視覚障害者の教育、就業に役立つ。たとえば、音声ソフトはPCの操作を容易にするし、録音機器は他人に朗読を頼む必要性を軽減する。印刷物の自動点訳も可能である。プラステック・レンズは弱視者が普通活字を読むことを可能にする。CCTVのような補助具、オーバーヘッド・プロジェクター、またコンピュータ周辺機器の使用は、視覚障害教育に広く可能性をもたらす。最近の技術を取り入れ、RCIは視覚障害者の教育の機会も変化させていきたい。

結論

人的資源開発分野を優れたものとしていくために、RCIは訓練され資格をもつリハビリテーション専門家、教師、親たち,そしてその他諸々を通して、リハビリテーションと特殊教育に関して総合的にサービスを提供するため努力を続けていくつもりである。

(訳:星野智子)

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