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保護者の立場から

Tula A Baxter, editor,Parents' Coloum
T.E.A.M. ヨーロッパ名誉会長
25, Newlands Avenue, Thames Ditton, Surrey, KT7 0HD
Fax/phone: +44 (0)20 8224 0735, Email: [email protected]

本編を書くようにとの要請だが、何を言って良いのかよくわからなかった。親として、現在の教師養成の状況や教師がどう養成されるべきかについて何を知っているだろうか?しかし、そのことについて考えれば考えるほど親は何かを付け加え、何かを言わねばならないということを理解してきた――そして我々の声は教育現場における視覚障害をもつ子供たちのために発せなければならない、と考えるようになった。

親として、私たち全員は自分たちの子供にベストの教育機会を与えることができるよう望んでいる。我々は子供たちの成功のチャンスは、視覚障害を持つ子供たちを理解し、子供たちのニーズを満たす専門技術を持つ教師との出会いによってもたらされるということを知っている。

適切な教師の訓練は子供たちの成功にとって重大な要素である。

それで、いくつかアイディアを出したいと思う。

● 学校側が行う教師「訓練」のあとのクラス担任との話し合い

――つまり、子供にもっと良い教育を与えることができることに関連した情報をもっと提供する

最良の教育は親と教師とが協力して行うものである。親として、教師の訓練に関しては与えるものは大きいと思う。少なくとも、私たちが自分たちの子供のことは一番よく知っているという意味で。今でも、私は娘の最初の教師が電話をかけて、視覚障害を持つ娘がどのようにクラスですごしているかを話したことを思い出す。「どのように接したらいいかわからない」と教師は言い、「娘さんをクラスの中に参加させることができないのです」と付け加えた。娘がどのように自分の限られた視覚を使うか、直接光線がどのように視覚に影響を与えるかを説明すると、その教師ははじめて合点がいった。私たちはその後も、放課後にその他いろいろ話をした。そのことは双方にとって有益であり、もちろん娘にとっても非常に有益であったークラスにとってもである!

● 専門教師による家庭訪問は、自分たちの子供に関する情報を得るインフォーマル「訓練」の機会を私たちに提供する。

私たちの訪問教師は月に1回訪問してくれた。私はこの訪問を心待ちにしていた。というのは娘の様子やどうすれば手助けをできるかについて多くを学ぶことができたからだ。ある日、訪問教師は娘の部屋を見せてほしいと言ったーステキなランプシェードを誉めながら。そのランプシェードを「誉めた」後、彼女は色のことを口に出した。「あなたは強い色が好きなのですね。」「そうではありません。この色は娘のためなのです」と私は答えた。まぶしさをさけるうえで、壁やカーテンの色がパステル調の色合いではないほうが、娘にとってどのくらい楽であるかを説明した。

輝所恐怖症は、適度な明るさとあまり反射しない色合いによって大いに軽減される。訪問教師はその他にも私が娘にしていることを熱心に知ろうとした。彼女はそうやって得たことを他の親に教えることができた。

以上の2つは私の経験からの例である。私が他の人から得たものもたくさんある。そのような知識を専門家と共有できることは嬉しいことだ。しかし、学校側が行う教師訓練に関して、私たちはどのくらいの割合で参加しているのだろうか。訓練専門学校や大学の中で親の意見はどこにあるのだろうか?

英国における保護者団体(parent organization)の委員長として、また、視覚障害を持つ娘の親として、数年前2つの教師訓練コースに寄与するように頼まれた。最初の時は私自身、試験的な試みでインフォーマルなものであった。次の年、私はこのコースのために充分な材料とたくさんの資料を取り揃え、万全の用意をして臨んだ。

私の貢献は大いに評価され、学生とはその後も連絡を取り合いながら、いろいろな話題を話し合ったり、親の視点から見た情報提供の依頼があったりした。3年目、一つの大学が保護者の視点を含むコースを設立したが、そのあとそれは廃止された。保護者が教師の養成・研修 に手助けができると考える訓練教師がいる一方で、そう思わない訓練教師もいるーこれは個人的選択で、強制的なものではないのだから。

私は支援団体LOOK London 、おおびヨーロッパを基盤とした親を支援するネットワークであるT.E.A.M.の会長として、英国内だけでなく、欧州議会、一時的ではあるが、遠くロシアにおいても、専門家の養成について、自分の意見を述べ、他の親の意見きいてもらうよう要請できる立場にいる。当たり前のことであるが、親たちは正規に参加することができ、知識と経験を専門家と共有する機会を与えられなければならない。そうするのが差別・偏見がないからというのではなく、そうするのが正しいからである。

最近、2つのT.E.A.M.団体―ひとつは英国、もうひとつはロシアーが一つのチームとして保護者と専門家が協力して活動するプロジェクトに参加することに賛成した。というのは、英国政府の助成金もあり、「一緒に活動すればもっと多くのことができる」からだ。私はこのプロジェクトについて二人の政府に任命されたコンサルタントと議論したー私は実際、それぞれの国から助成金が二つの保護者支援団体に与えられるかどうかを確かめようとした。その二つの保護者支援団体は保護者による保護者のための団体で、いままで一緒に活動したことはなかった。私は非常に期待していたというわけではなかったので、「そのことをどう思いますか?」と訊ねた。「あなた方は“単なる保護者”ではありません。」というのが答えだった。「あなた方は全員その分野の専門家であり、自分たちの子供をよく知っており、どう支援するのが一番いいのかを知っているという強みがあるのです。」我々は助成金を申請した全額受け取ることができて非常に嬉しかった。しかし、助成金を得るのは本当に大変だった。

昨月、ブルッセルで開かれた欧州議会がそのドアを開いたので障害者は代表として参加ができ、自分たちが関わっている問題を提起することができた。私は英国の代表団のひとりとして議会に出席できない視覚障害を持つ子供たちやその保護者の代表として招かれた。招待は、保護者は視覚障害を持つ子供の教育に対し同等のパートナーであるべきだと信じるある人物からきたーしかし、その立場にいるほかの誰が、保護者の代表の参加をみとめるだろうか。ブルッセルで、私は他の国々がこの歴史的な出来事に保護者の代表の参加を認めているのを知って非常に嬉しかった。―しかし、保護者の代表を送らない多くの国々もあるのだ。我々は口々に「どうしてだ?」という疑問の声をあげなければならない。

保護者たちは、親の立場から子供たちのニーズに対して、訓練教師や政府関係者に影響力を与えることができるし、与えようとしなければならない。我々に必要なのはそれを行う機会が与えられることである。専門家が自分たちの「雇い主」に言いづらいことでも、保護者は頻繁に口に出して発言することができるのだ、ということを記憶しておいたほうがいい。我々は そのような態度や取り組みにおける変化から恩恵を受ける立場にいるー特に私たちの子供は。

(訳:黒川哲宇)

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