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TECK TALK

デイジー・デジタル音声ブックが豊かなリテラシー体験を提供する理由

ウィル・パーソン ICT開発委員(Pre-16) RNIB(The Royal National Institute for the Blind:王立全国盲人協会)

 

「デイジー」と「ブック」という言葉をオーディオ・リソースに携わる一人一人がリンクして意識するようになってから久しくなる。だが、やっと最近になって、このような携帯可能で、操作しやすく、しかも楽しく使えるという革新的な技術が、どうしてより評価され理解されているのかということが取り上げられるようになった。

 

DAISYとはDigital Accessible Information Sysytem(デジタル音声情報システム)のことで、電子ブック開発の世界標準規格である。電子ブックは、限られたキーを使用することで、操作が簡単で、音声合成装置ではなくデジタル録音された音声が使用されている。音声と画面上の文字が同期しているのは、Web言語である「グルー言語」の使用をリンクさせたためで、そのことでさらに画像や他種のファイルを同時に扱うこともできるようになるかもしれない。ユニークで気の利いたDAISYの特徴は、印刷物を読むことが困難な多くのユーザー、特に視覚に障害を持つコンピューターのユーザーのニーズから考えられている点にある。 

 

また、デイジー形式の電子ブック(現在は主にCDで作動するが、将来は各種小型記憶媒体に適応されるだろう)は、デイジー・プレーヤーに完全に対応するであろう。これはちょうどCDウォークマンに似ていて、実際に、多くの新型モデルはMP3CDや他の音楽CDやオーディオCDを再生する。つまり、学生でも、簡単な操作で列車やバスの中で利用できるかもしれない。だから、違和感なく普通に携帯でき、他人とは違う特別なものを持ち歩いているような感じにはならない。

 

これまでデイジーに携わり、その利用を普及させてきた人たちはデジタル権利管理(DRM)の課題に本腰を入れて取り組んでいかなければならなかった。DRMでは、デイジー規格に入力されたデータを、その制作の対象となるユーザーの団体以外にはコピー配布しないということが保証されている。現在もこの件に関して取り組んでいる最中であるが、多くの出版社は、例えばアメリカのタイム・ワーナーのようにデイジーでベストセラーものを出し、別バージョンと平行してこれらを販売している。将来、電子ブックの暗号化が、海賊版を防止するための対策としてとられると思われる。そのため、電子ブックの内容にアクセスするにはコード入力が必要となる。ここ英国では、5月に施行された著作権法案への移行により、視覚障害を伴う生徒が利用する電子ブックの共有がさらに自由になり、許容範囲も確実に広がってきている。

 

このような試みにより、現在ではデイジー規格の高品質なリソースが利用できるようになってきているし、ユーザーもどのようにその機器に取り組むべきか理解してきている。どうすれば、評判となり、友だちが授業で上手に活用し、簡単にテキストを検索して、しおりを付けるか。できればこれら全ての課題が現在の研究からテーマとして浮かんできてほしい。実質的な計画で最も重要なものは、RNIBが導入したインクルーシブ教室のためのデイジー・リテラシー機器である。支援しているのは、ドルフィン社(Dolphin Computer Access)とバーミンガム大学、そしてミッドランドの3ヶ所に点在する感覚サポート・サービスである。このサービスは、イギリス教育雇用省を経て資金供給され、そこではデイジーを使っての教育の可能性を評価したいと強く望んでいる。私たちは以上のような両側面を共同研究している。つまり、まずはデイジーの7つの非常に関連性のあるテキストの核心部分の作成で、次が正確で完全な評価プログラムの作成である。その評価に関しては、生徒、担任教師、顧問の先生や大学の研究チームの考えを採用するつもりでいる。できることなら、こうしたことから道が開かれ、従来の便利な機器や用具、例えば標準録音のオーディオ、拡大本や点字に関するデジタル録音図書の能力が、今まで以上に意識され理解されていってほしい。

 

まずは、デイジー・ソフトウエア・プレーヤーの効力は包括的なデザインによるものであり、他の多くのウインドウズ・メディア・プレーヤーによく似ている。しかし、以前の構築の中心はキーボードの使いやすさであった。実際、最近のプレーヤーは「読みとばせる」内容が使われているということを認識するので、例えば、必要に応じて特殊ページやページ番号や行番号に切り替えられるなどの機能がある。しかし全体的に見て、マルチタスクにすでに熟達している学生によって、デイジーが有益な道具になるのは明らかだ。多くの学校や大学が求めることは、学生が録音機器を聞きながらワードやエクセルのようなプログラムで作業ができることである。そして、このソフトウエアー・プレイヤーには、こうした作業を容易にする「リモコン」機能が備わっている。また、とてもおもしろいことは、デイビー(DAVIE)計画と呼ばれるスコットランドでの非常にすばらしい計画のおかげで、力がついて、やる気が出てきたと多くの学生が感じていた。というのは、自分自身のデイジー図書を作成したり、自分の記事やエッセイをこんなにも簡単に構築でき、その文章の中をいろいろ移動できるということを知ることができたからである。このようなことが、最もダイナミックで画期的な特徴のひとつになり得る。同時にデイジーは以前にも増して普及し、ここが肝心なのだが、多くのユーザーが夢中で取り組りくむようになってきた。

動作画面例:
Easereader DfES資金計画で使用されたソフトウエア(Department for Education and Skills:イギリス教育雇用省)

参照サイト
デイジー・コンソーシアム:http://www.daisy.org
RNIBテクノロジー:http://www.rnib.org.uk/technology
ドルフィン社:http://www.dolphinse.com
DAVIE計画についての報告:http://www.rnib.org.uk/xpedio/groups/

(訳:近藤邦夫)

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