会長挨拶

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カンボディア、プノンペンにて
2003年6月9日

会員の皆様へ

私はいま、オーバブルックの事務所から始まった、地球半周にあたる東南アジアの長い旅行を終えて、エデュケータ誌7月号掲載のこの原稿をしたためております。この旅行中、いくさきざきで、ICEVIについての熱烈な反響を確かめると同時に、昨年夏の第11回世界大会以来開始された多くの新しい動きに触れることができました。本稿では、そのいくつかについてお話をさせていただくことにします。

3月下旬、ICEVIはこの4年間を総括するはじめての役員会を南アフリカ、ステレンボッシュで開催しましたが、私はこの会合は今までの役員会のなかでもっとも生産的なものであったと自負しております。役員会を代表して、会合をとりまとめていただいたアフリカ地域議長のウイルフレッド・マイナ氏と南アフリカ小委員会の皆さんに改めて感謝をする次第です。なお、紙面の関係で詳細は本号の“活動報告(Strategic Update)に掲載することにいたします。

新しい試みであるICEVI−ハドリー遠隔教育計画、すなわち“グローブオール(Globe- All)“はどこへ行っても話題になっていました。ご存知のように、この計画は電子メールまたは郵便を使うことで、自宅で、自分の都合のいいペースで学習することができる、技能と知識の向上をはかるためのユニークなプログラムです。どなたにでも役に立つ内容のものでありますから、みなさんもぜひ、エデュケータ本号をご参照になり、グローブオール計画の内容をご確認の上、学生登録をいただくようお勧めします。本プログラムの各コースはすべて無料です。

ICEVIの活動計画をご覧になった方はすでにご存知のとおり、この計画成功のカギは共同作業ということにあります。しかし、いかなる計画であろうと、具体的な成果が見え始めるまでは、人々の関心を得ることはできません。過去6ケ月を通じて、私たちはこの共同作業、ということが、単なる建前上のことば(politically correct word)ではなく、実際の行動となって現れていることを実感しています。

このたび新しく刊行された、インクルーシブ教育に関するICEVI−WBU行動計画案はICEVIがほかの組織と緊密な連携作業をしていることを示す一つの例です。本案は、私たちのウエブサイトでも、今号のエデュケータ誌でもご覧になることができますが、私はまず、本件について多大のご尽力をいただいたビル・ブローヒャ−氏に感謝の意を述べたく思います。ICEVIとWBUとは現在、両者の専門組織間で作成された教育政策の改定更新の作業に着手していますが、これは各国で政府の施策に関与しておられるかたがたには特に役立つもので、エデュケータの次号が発行される前までには用意できるはずです。

また、ICEVIが緊密に連携をとっている組織には、このほかに国際失明予防協会 (International Agency for the Prevention of Blindness, IAPB)があり、次回のIAPB総会の場で、ICEVIのチームが教育に関してのシンポジウムを主宰することになっております。

教育活動をより包括的なものにするために、スポーツとレクリエーションは重要な要素でありますが、幸い、私は来る8月1日、IBSA世界競技の行われるカナダのケベックで、国際視覚障害者スポーツ協会(International Blind Sports Association, IBSA)のエンリケ・ペレス会長とお会いすることができることになりました。この場で、私たちはふたつの組織がより緊密に協同するにはどうすればいいかを協議することにしています。エデュケータ誌を通じて、近い将来、IBSAの活動報告をご覧になったり、地域、国レベルでなんらかの共同プログラムを立ち上げられるようになることを希望しております。近々、われわれのウエブサイト www.icevi.org を通じて、またエデュケータ次号でIBSA-ICEVIの共同計画をより詳しくお知らせすることにいたします。

目の見えない子供たちに中級レベルの数学を教えるという、全世界どこででも困難とされるであろう作業に取り組んでおられる皆さんに朗報をお届けしたいと思います。ICEVIとオーバブルック・ニッポン 教育技術ネットワーク(Overbrook-Nippon Network on Educational Technology ON-NET)は5月、東南アジア地域でこの教育カリキュラムの教育方法、および教材を改善する活動をはじめております。この開発と講師マニュアルおよび教材の実地テストにはほぼ1年をかける予定になっていますが、完成後はICEVI(www.icevi.org)およびON−NET(www.on-nte.org)のウエブサイトを通じて、誰でも入手できるようになります。それまでのあいだ、プロジェクトの進行状況を知りたい方は上記ウエブサイトおよびわれわれの定期刊行物、エデュケータ誌およびICEVIニューズラインをご覧ください。

さて最近、われわれはUNICEFが障害者担当局(Focal Point on Disability office)を閉鎖し、“児童保護(Children at Risk)プログラム”に併合する、というニュースに衝撃を受けました。私は直ちにわれわれが困惑していることをUNICEFの専務理事キャロル・ベラミー氏に訴えました。この間の私とベラミー女史とのあいだの書簡全文は本号に掲載してありますが、同氏はUNICEFの障害を持つ子供に関するコミットメントはいささかも後退するものではなく、逆にこの決定によってさらに前進する旨、回答してきています。われわれは同氏の言われるとおりの方向に進むことを強く希望するものですが、皆さんもそれぞれの国において、状況を把握していただきたいと思います。今後、本件に関するフィードバックをICEVI事務局長あてお送りいただくとともに、視覚障害を持つ子供たちのニーズが該当するUNICEFのプログラムに反映されているかどうかをチェックしてくださるようお願いいたします。

ICEVIはまた、視覚障害を持つ従業員のための“ツールキット”開発に関して世界銀行と緊密な協力をしてきております。この“ツールキット”は視覚障害者のニーズを理解しようとする銀行当局者の対応を支援するためのガイドです。われわれが目の不自由な子供たち、とくに開発途上国の子供たちの教育サービスを強化拡大するにあたっては、各国政府に働きかけてくれる世界銀行のプログラムにこれに示される考え方がきちんと反映されているよう、銀行当局と密接な関係を保っていくことが重要だと考えます。

さて、ここで皆さんに準備をはじめていただきたいことをお知らせします。私はマレーシア盲人協会(Malaysian Association for the Blind: MAB)で2006年の世界会議のホストをつとめていただく会議準備委員会のかたがたにお会いしましたが、MABはもちろん、マレーシアの関係団体の皆さんのこの会議の成功にかける意欲は大変なものであると感じています。世界会議の開催場所はクアラランプールが予定されていますが、ぜひ皆さんに、この“マレーシア、真のアジア!”と題する会議にご参加いただきたいと思います。もうすぐプログラム委員会のメンバーの指名を行いますが、エデュケータ次号でそのアナウンスメントと論文募集を行う予定です。

資金の面に関しては、私は皆さんに代わって当協会からアジア失明防止基金およびチャゴス・エスパニオーラ会Organizacion de Ciegos, Espanoles, ONCE)に公式な感謝の意を表したく思います。両組織は、世界規模で視覚障害を有する児童青少年むけ教育機会の均等を志向するわれわれの趣旨にご賛同のうえ、その数も年々増加している、年間2万ドル以上の寄付をいただく資金提供者リストにくわわってくださったのです。

さて、ほかにもお話したいことはまだありますが、もし、本誌の編集長がこの場にいあわせたら、間違いなく“もうそろそろやめにしてください!”と言い出すと思いますので、この辺で筆をおくことにいたします。おわりに、みなさんの積極的なご参加によってICEVIがますます強固かつ意義ある活動団体になりつつあることに感謝をいたしたいと思います。

ラリー・キャンベル 会長

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