マラウィにおけるこの巡回指導プログラムは、1983年、Lilongwe地方における2名の視覚障害児童を支援する1名の巡回教師から始まった。現在マラウィでは、60名の巡回教師が1239名の児童生徒を支援している。このプログラムでは、視覚障害教育の訓練を積んだ巡回教師が、指導の必要な児童生徒を同定し、晴眼児と並んで授業を受けることのできる最寄りの学校へ在籍させる。巡回指導プログラムを導入した目的は、寄宿して盲学校に在籍させることとリソースセンターという伝統的な措置からの脱却であった。なぜなら、必ずしもすべての視覚的な困難を有する児童生徒が盲学校に措置される必要はないと考えられたからである。巡回教師1名が支援する児童生徒数は、各児童生徒のニーズやその児童生徒の住む地域の学校数等によって様々である。近年では、巡回教師1名あたりの受け持ち視覚障害児童生徒数は、最小で5名である一方、40名を支援している教師もいる。
Enock Kabvinaは38歳の巡回教師で、この国の前首都である大都市Blantyre郊外で働いている。通常の勤務日、Enockは午前6時頃起床し、その日の仕事の準備に取り掛かる。今日は、3つの学校の4人の児童生徒を訪問する。彼は午前7時に家を出、自転車で4km離れたMasala小学校へ向かう。そこが彼のプログラムにおける一番目の学校である。Patuma Halidaは10歳で、Masalaの第3学年に通学している。Enockはそこで約1時間彼女に視機能訓練を行うよう計画している。そこの標準第3学年にはPatumaを含めて60人の児童がいる。午前8時45分、Enochは荷物をまとめ、Patumaのもとから去り次の学校へ向かう。次の学校はちょうど小川を越えたところにあり、約1km離れている。午前9時、EnockはNamatapa小学校標準第7学年の教員のKadaya氏と会う。この小学校の第7学年には80人の児童がおり、Jani LotiとMary Gautiの2名の視覚障害児がいる。Kadaya氏はEnockに、Janiは数学に問題がありMaryは英語がそれほどできないことを報告する。巡回教師はそれぞれの科目で遭遇している問題を支援するために、彼らを同時にクラスから取り出すことを決める。教科の復習はEnockの予想よりも時間がかかった。午前11時までに、巡回教師は、最近新しい眼鏡を作ったJosephina Mtamulaが1年生にいるIsiamic Community Day中学校に着いた。Enochは時間の大半を担任へのJosephinaと彼女の眼鏡の説明に費やした。正午までに、Enochは帰路につき、午後1時頃帰宅した。それから昼食をとり、しばらく休憩の後、午後は3歳の全盲女児のいるGama家を訪ねることを計画した。Enochは、Gama家へ幼児向けの様々な遊びを紹介し、親に就学へ向けてのどのように準備すべきかについてアドバイスした。教師はその日の仕事を午後4時30分に終えた。
これは巡回教師のほんの一事例を紹介したものである。1日に3校回ることは可能である。なぜなら、この日の各学校はお互いに近くにあり、児童生徒のニーズは複雑ではなかったからである。Enockが重度の視覚的問題を抱える児童をSt Kizito小学校へ訪問した時は、彼の家から6km離れていたのでいつもより早く出発し、より多くの時間をその学校で費やした。
巡回指導プログラムはMalawiの11地区で実施されている。このプログラムの導入によってより多くの視覚障害児に基礎教育を受けさせることが可能になっている。最終学期の終わりには、教育を受けている全1628名の視覚障害児童生徒のうち、1239名が巡回教育プログラムの対象となっている。
プログラム | 盲 | 弱視 | 全体 |
---|---|---|---|
リソースセンターユニット | 197 | 117 | 314 |
寄宿して盲学校 | 38 | 37 | 75 |
巡回指導プログラム | 51 | 1188 | 1239 |
全体 | 286 | 1342 | 1628 |
表は視覚障害児童生徒の分布を示している。
長年にわたるプログラムの実施の結果は、寄宿して盲学校で学ぶ場合と比べて、巡回指導を行う方が数点の長所があることを証明した。顕著なものは以下の通りである;
マラウィの巡回指導プログラムは、その結果が示したように、このサービスからより多くの視覚障害児童生徒が利益を受けることができるので、奨励されるべきである。現在各巡回教師が受け持っている範囲を縮めるために、より多くの巡回教師を養成し、配置するとともに、教師を増員しマラウィの残りの教育地区へサービスを拡大する必要がある。